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スマン。

 投稿者:たか☆ひ狼メール  投稿日:2003年 3月20日(木)00時32分35秒
  と、突然、トガリの頭を黒革ジャンパーの手がポフッと叩く。
「トガリスープかぁ…それもいいかもね」
「ああああ姉さん!いつの間に起きてたのぉ!」

「いいじゃない、あんた、昔料理人目指したいって言ってたじゃないの」
「え・・・まぁ・・・」口ごもるトガリ。

「えっと、あ・・・の、おねーさん?」すっくと立ち上がったラッシュ。
「お?」
「昨日は・・・ありがとう」気のせいか、頬が赤い。
「あ、いや、あたしの方こそ、偶然通りがかっただけだって、それよかもう大丈夫なの?」
彼女はトガリから手渡された皿からシチューを盛った。
「え・・・うん、昨日死ぬかと思ったのが嘘みたい」ますます赤くなる。
「昔、ちょいと習った治癒の魔法がこんなとこで役に立つなんてね」
そう言って、ほっこりと煮えたジャガイモを一口に頬張る彼女。
「ラフィ以外の人の使う魔法って初めて見たね♪」とナーガ。
「うん・・・俺たちも修行やっててケガしょっちゅうだからさ、ラフィにいっつも世話になってるけど」
「ララララフィって誰?」彼女の2杯目を盛っていたトガリが聞く。
「え?ラフィの病院の・・・って、知らない?」ナーガが聞き返した。

「二人とも・・・どこから来たの?」
突然、彼女が口をはさんだ。
「聖地だけど・・・」何故か会話がかみ合わない。

一瞬だが、しんとした沈黙が流れた。
「聖地って・・・ここからうんっっっっと遠いけど・・・まさか二人とも、そこから!?」
気のせいか、彼女の顔が驚いているように感じられた。

「え、うん、ずっと歩きで」ナーガが皿に残ったシチューをぺろんと舐める。
「あああ歩きって・・・ちょちょちょちょっと!」
トガリ達が驚くのも無理はなかった。
 

いきなりの間違い…(^_^;)

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 9月 3日(火)22時43分29秒
  旅-3より 
>ラッシュの左足に深々と矢が刺さっていた。

旅の夜、そして朝。より
>確か右の太腿に刺さったはず
>それに右腿の破れ目。

すまん、ラッシュも私もおバカッス…
左に統一して下さい(笑)
 

トガリと朝食と。

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 9月 3日(火)11時39分34秒
  「そうだったんだ…」ナーガとトガリの話を聞き終えたラッシュは、ポツリと答えた。
「なななんにせよ、その分じゃ痛みとかぜぜぜ全然無いみたいだしね、よかったよかった」
陽が出てきたのか、トガリは黒いサングラスを取り出し、短い鼻面にちょんと引っ掛けた。
何故かそれに反応してか、ラッシュのお腹がグウと鳴る。
「あ…」赤面するラッシュ。
「無理も無いよ、昨日のお昼っから何にも食べてないもんね、兄貴」
そう言ってナーガは鍋のスープを軽くかき混ぜる。
しかしおかしい、俺たちスープの材料なんて持ってきたっけ?とラッシュは悩んだ。
「あ、私は火加減見てただけ、このスープ、トガリさんが作ったんだよ」
「へぇ~、凄いんだトガリさんって」感心するラッシュ。
何故ならば、ナーガは家事経験ゼロだし、料理にいたっては「魔女の薬?」みたいな溶液しか作れないからである。
「ささささぁ、食べて食べて、おおおかわりたくさん出来るよ」トガリが木のお皿にスープを注ぐ。
お皿の中には小イモとか干し肉とかが具だくさん入っている。スープと言うか、それだけで充分な食事になるくらいの。
またもやお腹がグウと鳴る、しかし今度は兄妹同時だ。
「ひはは、ふふ二人ともとととってもお腹空いてたんだね」
「え…あ、はい…」照れながらトガリからスプーンを受け取った。

「いただきます!」軽く両手を合わせて、まずは芋から。
…久しぶりのご馳走。美味しくって体から力が抜けそうな感じになる。
しかし食べるほどに活力が沸いてくるような、そんな不思議な感覚であった。 
「トガリさん!凄い美味しいよこれ!」瞬時におかわりするラッシュ。
「あたいもおかわり~」ほぼ同時にナーガも。

結局、兄妹は5杯もおかわりしてしまった。
「トガリさん、きっと街行けば最高のシェフになれるよ!」満腹状態のラッシュが言う。
「うん、絶対レストラン開店したら毎日長蛇の列間違いなし!!!」合わせてナーガ。
「そそそんなにほめられると照れちゃうよ…でも…」おデコをかきながらトガリは言う。
「でも…なに?」
「ぼぼぼくは…姉さんと一緒にたた旅してる方が…ずっといい…」
「トガリさん…」
「そそそそれにね、僕はスープとかシチューとか、にに煮込み料理しか作れないんだ、だだだからレストランなんてぜぜ絶対無理だって」
「そんなことない…そんなことないよ!」ナーガがすっくと立ち上がった。
「できるってば…≪トガリスープのお店≫とかさ…」
突然、トガリがぷっと吹きだす。
「と、どうしたの一体?」ナーガが不思議がる。
「ななななんか、僕がスープにされちゃうお店みたい、ごごごめんつい笑っちゃった」
次いでラッシュ、そしてナーガもつられて大笑いする。

と、突然、トガリの頭を黒革ジャンパーの手がポフッと叩く。
「トガリスープかぁ…それもいいかもね」
「ああああ姉さん!いつの間に起きてたのぉ!」
 

夜とテントと。

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 9月 2日(月)21時41分20秒
  「ありがとう…ありがとうお姉さん!」ナーガは女性の手を握る。
…しかし、彼女の手は氷のように冷たかった。それに顔色も悪そうだ。
「あ…あああ姉さんの十八番の力なんだけどね、逆にじじ自分の体力思いっきり使っちゃうんだ」
「お姉さん…そんなにしてまで…」
「ん…?平気だって、しばらく休んでれば回復するって」女は息も絶え絶えにそう答えた。
「あ、じゃああたいのテントで休んで、大きいからみんな休めるよ!」

トガリと女はしばらく顔を見合わせて、答えた。
「判った…じゃああなたのテントで休ませてもらうね…」
「あ…兄貴も起こさなくちゃ、お姉さんにお礼…」
「その子はまだダメだと思うよ…身体のショックが強すぎたんだ、そのまんま寝かせておいた方がいいね」
「うん…」ナーガはラッシュを担ぎ上げると、テントの中に放り込んだ。
「あ、あああの、キミも休んだ方がいいよ、僕はだだ大丈夫だから」
慣れた手つきで女の上着を脱がすと、トガリは話し掛けた。
「トガリ…さんだっけ?寝なくって平気なの?」
「ぼぼ僕たちモーグはね、いいい一週間くらいは眠らないでもぜぜぜ全然平気で大丈夫なんだ」
「へぇ~、すごいんだ」
「けけけどね、朝の光は強すぎてちょっと苦手、だだだからね」
といって、トガリは着ていたベストの胸ポケットから、小さなサングラスを取り出した。
「ここここれ必需品なんだ、朝昼はね」
ナーガの顔に笑顔が戻った。
「さささぁ、まだ夜は長いからね、おおおやすみ」
「ありがとう…トガリさん」

かくして長い夜は更けていった。
 

癒しと夜と。

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 9月 2日(月)21時40分23秒
  「どうしよ…このままだと兄貴死んじゃうよ!モグラさん!」
「えええと、ぼぼボクの名前はモモモグラじゃなくってト…」
「トガリ!その子たちかい?」
「?」
「ああああ姉さん!」

トガリと名乗る小男の前に現れたのは、素敵な銀髪に白い肌の女性。
スラッとした身体にぴっちり目の黒革一色のジャンパーとパンツで身を固めている。
道着だけの小汚いナーガ達とは比べ物にならない容姿だ。
「その子かい?撃たれた子って?」息を切らせながらトガリに尋ねる。
「そそそそう、この子だよああ姉さん」
「兄貴…死んじゃうよぉ…」もはやナーガも頭の中が混乱状態だった。

しかし謎の女性は、トガリの手を引っ張って岩場の陰へと押しやった。
「あの…?」呆気に取られるナーガ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

岩場の陰にしゃがみこむ2人。

「…大丈夫?バレなかっただろうね」
「だだだ大丈夫、女の子は全然気付いてないし、おお男の子の方は気絶しちゃってるしね」
といってトガリは、こっそりとラッシュに刺さっていた矢を手渡した。
「…よし、証拠隠滅…っと」
女は譲り受けた矢を地面に埋めた。
「ででででも姉さん、こここのままじゃマズいんじゃないの?」
「マズいって一体?このまま逃げちゃえばあとはいいんじゃないの?」

トガリの声が上ずる。
「そそそ、そんなの無責任だってば!ああああのままじゃぜぜぜ絶対死んじゃうよ!」
「…………」
「すすす少なくともあの男の子にケガさせちゃったのは姉さんなんだし、ててて手当て少しでもしないと駄目だよ!」
「そっか…そう…だね」女はシュンとしながら立ち上がった。
「おおお応急処置だけでもしなくちゃ、ぼぼぼ僕が行くよ」
「…いいよ、トガリはあの女の子の面倒見てあげな…私があの子を治すから」
「あああ姉さん…まさか!」トガリが何かを知ってるように驚く。

「ああ、使うよ、アレを…」ポンとトガリの頭に手を置く。
「ででででも、最近アレ使ってないから…」
「心配しなさんなって、でも私が倒れちゃったら後よろしくね」
にっこりと女性は微笑む、何かを決心したように。

「あああ姉さん…」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お姉さん…」ナーガの顔は涙でぐしょぐしょになっていた。
「あ、ごめんねキミ、ちょっと状況聞きたくってね」ナーガのくしゃくしゃな髪に手をそっと置く。
「……?」
「おおおお兄さんのケガ、見せてくれる?」トガリはナーガにそっと言った。
言われるがまま、ナーガは謎の女性にラッシュの包帯を解く。
「ん…大きな血管は逸れてるけど、確かにひどいねこれは…」
「血が…血が止まらないの…助けて…お姉ちゃん」涙声のナーガ。

女は何も答えぬまま、ラッシュの傷口にそっと両手をかざした。
「…一体…?」
「ちょっとお願いがあるんだ、今からこの子の傷治すから、動かさないでくれる?」
「は…はい」
「あとは…しばらく私に話し掛けないでね、集中が切れちゃうから」
「は…い」呆気に取られるナーガ。

女は軽く目を閉じて、とても深い深呼吸をした。
そして何やら独り言(?)を唱え出す。
「…私の源にある癒しの理力よ…この者の苦しみ、痛みをすみやかに取り去り、そして彼自身の治癒の力と合わさりて全てを治したまえ…」
ゴクリと生唾を飲み込むナーガ。

女の手のひらが蛍の光のような淡い輝きに満ちる。
すると…ごくゆっくりではあるが、ラッシュの矢傷が徐々にふさがっていった。
「(すごい…ラフィの魔法みたい)」
しかし、女の方も額に汗がじっとりと浮かんでいた、息も荒くなっているようだ。

10分くらいであろうか、しかしナーガ達には何時間にも感じられた。
ラッシュの傷は完全に治っていた。まるで時間の逆回しを見るような。
女の手のひらの蛍火が消えると、彼女はガクッと崩折れた。
「お、お姉さん!!!」
急いで背後から抱きかかえるトガリ。
「…こ、これでこの子のケガは完全に治った…ね?」
さっきと違い、ラッシュの息も穏やかな寝息のように変わっていた。
 

旅の夜、そして朝。

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 9月 2日(月)12時27分42秒
  小鳥のさえずりと日の光で目が覚めた。
いつもと変わらない朝…のよう…な……!??

「!!!!」飛び起きるラッシュ。
「え…?」まだ頭の中が混乱している。
夢じゃない、ここは昨日寝てたテントの中だ。
「え…っと…確か寝ようと思ったら狼が来て、追い払いに行ったら誰かが矢射ってきて…俺の足に刺さって…!!!!!」
ラッシュはシーツを跳ね除けた。
(確か右の太腿に刺さったはず、それを誰かが抜いてくれて…そしたら痛くて意識が遠…!!…あれ?)
─無い─
無いったらない。
矢が刺さったと思われる場所…傷あとひとつ無い。
試しに自分の顔をぱしぱしと叩いてみる…夢じゃない。
「う…そ…?嘘だろこれって!!!」つい叫んでしまう。

(そうだ、ナーガなら何かわかるはず!)ナーガならあのとき隣にいたからきっと!
「ナーガ!おい!起きろよ!ナーガってば!」隣でぐっすり眠っている布団のかたまりをゆさゆさと揺さぶる。

「んあ…まだ駄目…起き…ない」
「!!!!!!」ラッシュはまたも仰天した。
何故なら隣で寝てたのは妹ナーガでなくて、似ても似つかない銀髪の女性。
ますますラッシュの脳内が混乱する。
(そ、そうだ!外にだったら誰かいるはず!)
心の叫びのおもむくまま、ラッシュはテントの外へと飛び出る。
「ちょ、ちょっと誰…か…?」

そこには実に家庭的(?)な風景が広がっていた。
石を集めて作った即席コンロでことことと料理を作っている妹。
その隣でなにかちくちくと裁縫をしている小さなモグラの……モグラ!?!?!?

「あ、兄貴目ぇ覚めたんだ!よかった~」
混乱しているラッシュをよそにナーガが安堵の表情で語りかける。
「おおおはよう、もももうちょっとしたらおいしいスープできるからね」

「お…おは…よ…」もはやそれ以上返す言葉が見つからない。
モグラな人はとことことラッシュの方に歩んできて、ポンと何かを手渡した。
「ちち血の跡はほとんど消せたからね、そそそそれに破れた所も上手く縫っといたからはた目には全然わからないから大丈夫だよ」
それはラッシュの道着のズボンだった。
日に透かしてみるとようやく判るぐらいのシミ、それに右腿の破れ目。
ちょっと神業に近い洗濯技術というか裁縫技術と言うか、ラッシュは感心した。
「兄貴…今どーいうカッコしてるか分かってる?」ナーガが軽蔑な横目でじーっと見ていた。

ふと下を見る…下は裸だった。
「!!!!!!!!!!!」慌ててズボンを履くラッシュ。
「はぁ…」ふとナーガのため息ひとつ。
モグラな人はうぷぷと笑いをこらえていた。

「そ、そーいや…さ?」慌てたままラッシュは話題を戻そうとした。
「え?」
「え?じゃなくってさ、分かんないんだよ、確か夜に…さ!」苛立つ兄。
「あ!昨日の夜ね!」
「そそ!あれ夢じゃないよな?」
「うん、昨日狼が襲ってきて兄貴がちびっちゃったアレでしょ?」にひひとナーガが悪戯っぽく答える。
「ち、ちびっちゃうのはアレとして、その後追い払ってたら誰かに矢で射たれて、それで…」
「あ…そっかぁ、兄貴あれから意識なくなっちゃったんだね」
「ああ…だから分かんないんだよ!夢見たいでさ!」
「夢じゃないよ、兄貴すっげー痛がってたもん」じっと兄を見つめるナーガ。
「だから…なんで傷一つ無いんだかわからね-んだよ!それにそこにいる人とか、テントで寝ている女の人とか」

「あああの…」モグラの人が横から割り込む。
「トガリさんとあの人は命の恩人だよ、兄貴」
「そそそその、ララララッシュ君には最初から説明しないとだだ駄目なんじゃないのかな?ナーガちゃん?」
「あ、そっかぁ、そーだよね」

ナーガとトガリは兄に昨日の夜のことを説明した。
 

旅-4

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 8月20日(火)22時07分39秒
  「ナ…ガ…後ろ…!」
「え…!」
最後の狼は背後から今にも飛びかかろうとしていた
「ナーガ…くっ!!」
ラッシュは立ち上がろうかとした…が、痛みで立ち上がれない。

その時!
「くくくぬおぉぉぉぉぉぉ~ッ!!!」
兄弟より2まわりほど小さな男が、狼の両顎を掴んでいた。
月明かりに照らされたその姿…がっしりした体躯にコゲ茶の毛並み、大きな爪、ちょんと伸びた鼻筋。
≪土の民モーグ≫一般にモグラと呼ばれている者だ。

「モグ…」
「…ラ?」激痛を忘れて2人は呆然とした。

「おおお前なんかあああっちへ行っけえぇぇえええぇーーーーーー!!」
その男は小さな体からは想像できない力で、オーバースローではるか遠くへと狼を投げ飛ばした。
─数秒後、ドサッともキャンともつかない音がした後、走り去る音が聞こえた。

「ももももう大丈夫、おおお狼はいなくなっちゃったからね」
「……ぁ……」ぺたんと座り込むナーガ。

「ナー…ガ…大丈夫…か」かすれそうなラッシュの声が暗闇から聞こえた。
「あ、兄貴!」すかさず兄に駆け寄るナーガ。
「大丈夫だよ!誰かが助けてくれたんだ!」
「そ…か…良…った」今にも消え入りそうな声だ。
よく見ると、太腿に短い矢が刺さっていて、血が流れ出している。
「誰が…誰がこんなこと!」
「……」既にラッシュはぐったりしている。
「だだだ大丈夫?」どてどてとさっきのモグラがナーガ達のもとへ来た。
「兄貴が…にぃちゃ…んが…」緊張の糸がぷつんと切れたナーガ、必至に涙を堪えてはいるが、その姿は気丈な女の子ではなく、普通の女の子であった。
「ああああ!ははは早く手当てしないと!」
「矢が…矢が…」
「えええっと、ボク、ちょちょっと歯食いしばってね、矢抜くから」
間髪入れず、ぐいと矢を抜く。
「!!!!!!!!!!!!」ラッシュの声にならない叫び声。
「あ、もももう平気、抜いたからね」
モグラは見つからないように、サッと矢をポケットに隠した。
「(ふぅ…危ない危ない)」

「兄貴…一体誰がこんな…」震える手でナーガは破いた手ぬぐいを傷口に巻きつける。
「じじ地元の狩人かもしれないね…そそそれともきききキミたち命狙われてるとか?」
「それは…ないよ、きっと…」弱々しくラッシュが起き上がる。
「兄貴…」
「ありがとう…モグラのお兄さん…」
「ええ?いいいや、ちちちょっと通りすがった時に狼の声がきき聞こえたからね」
「どっちにしろ…狩人にしろ…瞬時に気付かなかった俺の責任だから…これ…」
「………」ナーガは言葉を返せない。
「ナーガ、行こう…また狼が来るといけないから…ぐっ!」
ラッシュは傷口を押さえて苦しみだす。
「兄貴!」とっさにナーガは兄の肩を支える。
「ど…か…近くの街…って…医…を」
「モグラのお兄さん、近く…医者ある?」

「えええ?いいいやこここの辺はずっと野っぱらだし…」
「どうしよ…このままだと兄貴死んじゃうよ!モグラさん!」
「えええと、ぼぼボクの名前はモモモグラじゃなくってト…」

「トガリ!その子たちかい?」
「?」
「ああああ姉さん!」
 

旅-3

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 8月20日(火)13時50分13秒
  さぁ~狼たち、早く襲っちゃいなさい~」

「…ナーガ、聞こえたか?」
「うん…近い…ね」
飢えた獣はテントから数メートルくらいまで近づいている、2人の研ぎ澄まされた勘はそれを察知していた。
「兄貴…やる?」ナーガはもう臨戦態勢に入っていた。
「しかないな…」
ラッシュはランタンに灯っている火をフッと消した。
「やるって言っても、殺しちゃだめだぞ、追い払うだけでいいんだからな」
「判ってるって、そのくらい」

ごそごそと兄妹はテントから這い出た。
灯りは消したが、2人ともそれなりに夜目は利く、狼の数を把握する事など造作も無い事だ。
「5匹か…」
「…だね」
「俺は正面にいる3匹追っ払うから、ナーガは後ろの2匹やれ…」
「…うん」
いつもは喧嘩ばかりの2人だが、こういうときには流石と息が合う。
暗闇の中の狼は、今にも飛び掛らんばかりの構えを見せていた。
「行くぞ!!!」
ラッシュは低く走りだし、ナーガは一気に2メートル近くジャンプをする。
そのままクルッと一回転、妹は後方にいる狼に瞬時に飛び蹴りを喰らわせた。
「ギャンッ!」
低いダッシュから、兄は戦闘の狼の鼻っ柱にパンチを食らわす。
「キャイッ!!」
吹っ飛んだ2匹は、泣きそうな声をあげながら戦線離脱した。
「(あと3匹!)」と思っている間に、疾風の速さでナーガはもう一匹を蹴り倒していた。
「え?もう?」驚くラッシュ。
「兄貴!手伝うよ!」

驚いていたのはラッシュだけではなかった。
「へ?こ、子供ォ?」
「あああ姉さん、あああの子只者じゃない、すす凄く強いよ」
驚くのも無理はない、彼女の脳内シナリオには、格闘家の子供などというデータは無かったから。
「ちょっと…これじゃわたしの計画台無しじゃない!せっかくあの群れ倒してお礼たっくさんもらおうかと思ってたのにィ!!」
「ああ姉さんの計画っていうか、もも妄想っていうか、せせ成功した試しなんてないような…」
「うっさい!!」彼女のカカト落としが小男の脳天に炸裂する。
「あぐわ!」
「こうなったら…一匹でも多く倒してあのチビ達から小遣いもらうしか!」
彼女はボウガンの狙いを狼に合わせた。
狙いは犬(?)の背後にいる狼!
トリガーを絞る!

「ギャッ!」
「へ?」
それはナーガがラッシュの背後の狼に向かう寸前のことだった。
「どした?ナーガ?」
「兄貴、今何かした?」
兄は首を小さく左右に振る。
ボウガンの女性の放った矢は、狼の後ろ足に見事命中したのだ。
「なんか、足引きずって逃げちゃった…?」
「ンなモン後で考えろ!後一匹!」

「よぉし!一匹やりぃ!」
「あああと一匹だね姉さん!」小男は事前に矢をセットしておいたもう一挺のボウガンを彼女に渡した。
「さぁ~て、動くんじゃないよ!矢が外れるから」
渡されたボウガンで、ラッシュの正面にいる最後の狼を狙う。

「兄貴!正面!」
「分かってるって!」
残された最後の狼は、ラッシュに飛び掛る寸前だ。

「喰らえ!マッタビ流必殺パー…!」

「わわっ!動くんじゃな…!」
俊敏に動く標的に狙いが絞れない。
バシュッ!
慌ててトリガーをガクッと引いてしまう。


「え…?」
「あ…兄貴…!」

「あああ姉さん!」
「あ…ちょ…ちょっと…わたし…そんな…!」

力なく倒れこむラッシュ。
「なん…で…だよぉ……が…こんな」
ラッシュの左足に深々と矢が刺さっていた。
「やだ…そんな、兄貴!」
兄の異変に気付き、駆け寄るナーガ。
「ナ…ガ…後ろ…!」
「え…!」
忘れていた、まだ一匹いたことを。


「あああ姉さん!行かなきゃ!ヤヤヤバいよ」
「わ、私の責任じゃないからね…いきなり動いた方が悪いんだから」
青ざめた彼女の腕は小刻みに震えていた。
 

旅-2

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 8月20日(火)13時49分5秒
  「とにかく兄貴、パンツ洗ってきなよ、それじゃあちょっと…」
「着替え…持ってきて無ェんだよ…」
「あのね~旅に着替えは常識でしょうが!」
「……!」

兄妹が狼の群れを忘れていたその頃、10mほど離れた小高い岩山からそれを観察している謎の二人がいた。
「あああ姉さん、おおお狼がテテテント襲っちゃうけど、そろそろ…」
最初に口を開いたのが、どもり症なのか怯えているのか分からない口調の小男。
「まぁ見てなって、わたしのシナリオに絶対不備はないんだから」
もう一方の女性は年齢が20代そこそこだろうか、小男とは全く釣り合いの取れていないスラッとした体型。ピンと伸びた鼻筋、そして肩まで届く銀髪。
「シシシシナリオ?あああ姉さん、いいいいつそんなの考えてたの?」
「ふふふ、襲い掛かる野獣達、怯える旅人、それを颯爽と仕留める、わ・た・し♪」
「ききき聞いちゃいねぇ…あああ姉さんもも妄想だけは世界一だからなぁ」

彼女は腰に下げていた革袋から銀色に輝く小さなボウガンを取り出した。それも2挺。
通常使っているボウガンとは明らかにサイズの異なる、言うなれば拳銃サイズのボウガンである。
彼女はその一挺を小男に渡し、もう一挺の弦を渾身の力でぐいと引く。
サイズは小さいながらも、使われている弦は通常の物とほとんど変わらないようだ。
「さぁ~狼たち、早く襲っちゃいなさい~」
 

旅-1

 投稿者:たか☆ひ狼  投稿日:2002年 7月29日(月)22時39分51秒
  ─まっさらな大地が続く荒野─
「だからぁ!地図忘れたのは兄貴の責任だろ!」
「でもお前は食料忘れたろ?どっちもどっちじゃん」
「そーいう問題じゃないでしょうが!」
消息を絶った父を探しににゴシェンへ向かったはいいものの、件の「ゴシェン」とは一体どういう国なのか、
そしてその国は隣国とはいうものの、どうやって行けばいいのか…
幼い兄妹にはそのような知識など皆無であった。
さらに追い討ちをかけるかのように、揃って持ち物の打ち合わせをしたはず…が。
「お金は…?」
「貯めてたお小遣いがちょっとだけ…兄貴は?」
「こ…この前欲しかったナイフがあって…それで…」
「…はぁ…」

─太陽が地平線の向こうへと沈んでいく…

「ねぇ、もう一回戻ってさ、再挑戦しようよ」
「でもさ、来た道覚えてっか?」
「あ…」
「仕方ないなぁ、こーなったらずっと先へ進もうよ!兄貴!」
「進んでどーするんだよ?」
「行商の人とかいたらさ、一緒に乗せてもらうの!」
「それでも来なかったら?」
「あ…まぁそん時ゃそん時でしょ!ハハハ!」
「はぁ…お前は脳天気でいいよなぁ…」

そして、漆黒の闇が地を覆い始めた。
「星が見えないね…明日は曇りかなぁ…」
2人は唯一の持ち物である簡易テントを張ると、いそいそと中へと潜り込んだ。
簡易とはいっても、元は両親が使っていたものらしい、かなり大きめだ。
「…明日は早く起きて…??」
ラッシュがそう言おうとした時、外から何かの遠吠えが聞こえた。
「ナーガ…聞こえた?」
「う、うん…」

ウォォォーン…その咆哮は風に乗り、そしてだんだんと2人のいるテントへと近づいてきた。
「…お…狼の群れだ…」
「ま、まさか、あたいたちのところ襲う気なんじゃ?」
「……………」
「もし襲ってきたら、戦うしかないのかなぁ…」
「……………」
「兄貴…黙ってないで何か言ってよ!」
不審に思ったナーガが兄の背中をちょんと突っつく。
「だわっ!!」飛び上がるラッシュ。
「ひっ!」つられて驚くナーガ。
「おおお驚かすなよナーガ!」
「ひょっとして、怖いの?」
「こ…怖くなんかないよ…ただ…」
「ただ?」その時、ナーガの鼻が何かを感じた。
「兄貴…何か臭うんだけど…」
「え?そっかな?何にも臭いなんかしないけど?」
しかしナーガは、その臭いと兄の戸惑いを逃さなかった。

「兄貴…もしかして、ちびってない?」
「ナーガそれ以上言うなぁァァァァァァァッ!!!!」兄がナーガに掴みかかる。
「あ、やっぱね~図星か」ニヒヒと含み笑いする。
「だ…だって…ナーガがいきなり驚かすから…」
「ウソだぁ!昔っから兄貴ってオバケとか怖いの苦手だったしぃ~」
「ぐっ…!」反論できないラッシュ。
「未だに夜トイレも行けないしぃ~」
「ぐぐぐ…!」
「兄貴…ひょっとしてまだオネショ癖治ってな…!」
「わぁ~!!言うな言うな言うな!!!!!!」

兄妹がそんな問答を繰り広げている間にも、狼の群れは確実にテントを中心に狭まりつつあった。
 

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